心理的安全性とは、従業員が安心して意見を述べ、リスクを恐れずに挑戦できる環境を指します。近年、多くの企業で心理的安全性の重要性が認識されており、その向上がチームの生産性や創造性に大きく影響を与えることが証明されています。
本記事では、心理的安全性の定義とその欠如が引き起こす問題について触れた上で、職場で心理的安全性を高めるための具体的な施策や、その向上による成果について解説します。
心理的安全性とは?その重要性を理解する
心理的安全性の定義とその重要性
心理的安全性とは、組織やチームの中で従業員が自由に発言できる安心感のある環境を指します。具体的には、従業員が自分の意見やアイデアを発表しても、罰せられたり非難されたりしないという確信を持てる状態です。心理的安全性が高いと、従業員はリスクを恐れずにチャレンジでき、チームの生産性や創造性が大幅に向上します。
心理的安全性の欠如が引き起こす問題
心理的安全性が低い職場では、従業員が意見を言うことを避け、ミスを恐れて新しいアイデアを出しにくくなります。このため、組織全体の成長が停滞し、生産性が低下するリスクが高まります。さらに、ストレスが増加し、従業員のモチベーションやエンゲージメントが低下する原因にもなります。
心理的安全性の欠如は、結果として離職率の上昇や人材の流出にもつながるため、企業にとって大きなリスクです。
「ぬるま湯組織」との違い
「ぬるま湯組織」と「心理的安全性の高い組織」の違いは、意見や対立への対応にあります。ぬるま湯組織は、居心地の良さを重視し、衝突や対立を避けるために意見が抑制され、成長意欲や生産性が低下しがちです。従業員は問題を指摘せず、挑戦を避ける傾向があります。これに対し、心理的安全性の高い組織では、自由に意見を述べることが奨励され、対立があっても建設的な議論により成長や学びが促進されます。
職場で心理的安全性を向上させるための具体的施策
【お互いを知る機会づくり】自己紹介
職場での心理的安全性を向上させる4つの因子として、『話しやすさ』『助け合い』『挑戦』『新奇歓迎』があります。しかし、これらを支える土台として、まず「お互いを知る機会づくり」が欠かせません。具体的な方法として、自己紹介が効果的です。ただし、表面的な情報にとどまらず、相手の価値観や経験を共有することが信頼関係を築く鍵となります。これにより、自然と意見交換やサポートがしやすい環境が生まれます。
【話しやすさ】リーダーによるオープンな対話の促進
リーダーが積極的にオープンな対話を促すことは、従業員の話しやすさを高めるために不可欠です。
リーダーが従業員の意見やフィードバックに耳を傾け、発言しやすい環境を整えることで、従業員は安心して意見を共有できるようになります。こうした対話が、信頼関係を強化し、より良い職場環境を作ります。
【助け合い】助け合いを促進する文化の構築
リーダーは、従業員が互いに助けを求めやすい環境を整え、サポートし合う文化を奨励することが必要です。特に、リーダー自身が助けを求める姿勢を示し、助け合いが「強さの象徴」であるという認識を広めることが、助け合いの文化を浸透させます。
【挑戦】失敗を許容する文化の醸成
失敗は学びの機会であり、責められるべきではありません。リーダーは失敗を受け入れ、それをチーム全体で共有することで、組織全体の改善と成長を促進します。こうした文化が根付くことで、従業員はリスクを恐れずに挑戦できる環境が整います。
【新奇歓迎】多様性を受け入れる文化の構築
多様な意見や新しいアイデアを受け入れる文化は、職場のイノベーションを促進します。
リーダーは、斬新なアイデアをすぐに否定せず、その可能性を探る姿勢を示すことが大切です。
たとえ採用されないアイデアであっても、その理由を丁寧に説明し、次の提案を促すことで、持続的な創造性を引き出すことができます。
心理的安全性が向上することで得られる成果
離職率の低下と従業員満足度の向上
心理的安全性が高い職場では、従業員が安心して働けるため、職場環境への満足度が向上します。
従業員が自分の意見やアイデアを表現できることで、自分の役割や存在意義を強く感じ、組織に対する忠誠心が増します。その結果、離職率が低下し、優秀な人材の定着率が高まります。
生産性とチームのパフォーマンス向上
心理的安全性が確保されたチームでは、従業員同士が積極的に協力し合い、生産性の向上が期待されます。意見交換が活発になり、多様なアイデアが共有されることで、より効率的な業務遂行が可能になります。さらに、従業員がリスクを恐れずに新しい方法に挑戦できる環境は、イノベーションの創出にもつながります。
成功事例に学ぶ心理的安全性向上のポイント
ここで、2024年に「心理的安全性AWARD」のゴールドリングを受賞した弊社『株式会社トリプルバリュー』の事例を紹介します。
同社では、パート社員の離職率が50%と高い状況が課題として浮上しました。これに対し、心理的安全性を向上させることで、パート社員が安心して働き、定着率を高める必要がありました。
トリプルバリューが導入した施策
①価値観の共有
自社開発したエンゲージメントカードを用いて、価値観を共有する仕組みを導入。社員全員が自己対話を経て自己開示し、相互に受け入れることで、チーム全体のコミュニケーションを深めました。
②感謝と承認の文化
「いいね」や「ありがとう」の感謝を日常的に表現し合う習慣を作りました。特にマネジメント層が率先して行うことで、ポジティブな職場文化を形成しました。
③働きやすさの向上
出勤の自由化: パート社員が好きな日・時間に出勤できるようにしました。これにより、育児や家事の都合に合わせた柔軟な働き方が可能になり、仕事と家庭のバランスが取りやすくなりました。
子連れ出勤: 子供を連れて出勤することを許可し、特に小さな子供を持つ社員が安心して働ける環境を提供しました。
リーダーが強い意志を持って導入し、柔軟なオペレーション体制を整えたことが成功の鍵となりました。
④ニックネームで呼び合う
親しみやすい環境を作ることで、職場の距離感を縮め、誰でも自由に発言できる心理的安全性の高い職場を実現しました。
⑤みんなで家具づくり
事務所で使用する家具づくりを共同作業で実施しました。フラットな立場で協力し合い、目標を達成する経験を共有することで、自然にコミュニケーションが促進され、チームワークが強化されました。これにより、
⑥お互い様の文化を醸成
お互い様の文化を醸成し、急な休みやトラブルにも柔軟に対応できるようにしました。
たとえば、急な欠勤があってもLINEで全体に報告すれば問題なく、全員でフォローし合う体制を整えました。
⑦挑戦・新奇歓迎の姿勢
CXO制度: 全員が役割を持つユニークな制度を導入。たとえば、花担当CFO(Chief Flower Officer)、資料作り担当CSO(Chief Shikumika Officer)など、責任を持たせることで、自分の役割に誇りを持ち、積極的に貢献できる体制を作りました。
失敗を歓迎: ミスが発生した場合、それを否定するのではなく、改善の機会と捉え、チームで問題解決に取り組む姿勢を持ち続けました。挑戦する文化を推奨し、新しいことに取り組む社員が称賛される職場を作り出しました。
トリプルバリューの施策の成果
これらの施策により、心理的安全性が向上し、以下の成果が得られました。
離職率が4.7%まで改善し、定着率が飛躍的に向上。
口コミ採用によってパート社員が集まり、採用コストはゼロに。
売上は前年対比で175%増加し、ビジネスの成長に貢献しました。
心理的安全性AWARD詳細記事はこちら:
https://www.triplevalue.jp/post-2020
まとめ
心理的安全性を向上させることで、従業員は安心して意見を発信できる環境が整い、結果として生産性やチームのパフォーマンスが向上します。また、従業員満足度の向上や離職率の低下といった組織の安定性にも寄与します。
競争の激しいビジネス環境で成功するためには、心理的安全性の確保が重要な鍵となるでしょう。
「一人ひとりが未来や可能性に胸ときめかせ、ワクワクしながら働ける”ワクワーク”な社会を創る」ことを私たちはミッションに掲げ、働きがいの高まる場を増やしていきたいと考えています。