この記事では、エンゲージメントカード事務局公認の認定ファシリテーターの皆さんに、実際にカードを使って感じたことや、印象に残っているエピソードを伺っています。
今回は、S&S Dialogue 代表の岡村様にお話を伺いました。
プロフィールとキャリア

岡村 祐一 様 プロフィール
●S&S Dialogue 代表
●Health Psychologist / Facilitator
●久留米大学大学院心理学研究科修士課程(臨床心理学)修了
●佐賀大学大学院医学系研究科博士課程在籍
企業研修やセミナーへの登壇は300回以上の実績を持ち、NPO運営やまちづくり、研究などに関する豊富な経験を有しています。さらに、多様な分野での受賞歴もあり。
現場の声で紐解く、エンゲージメントカードの魅力
――岡村さんのプロフィールと現在のご職業
健康心理学の実践研究者であり、企業研修講師でもある岡村さんは、研究と現場実践を行き来しながら「人の心に触れる仕事」に日々向き合っています。大学院では認知症予防の研究を進めつつ、代表を務める法人では企業向けの対話型研修や、まちづくりに関わるNPO活動など、幅広く活動中。
10代の頃からファシリテーションに興味を持ち、地域の話し合いの場で人と人をつなぐ面白さに惹かれ、大学入学と同時に法人を立ち上げたというキャリアの持ち主です。
――導入のきっかけ——なぜエンゲージメントカードだったのか
出会いは偶然でした。Amazonでカードゲームを探していたとき、ふと目に留まったのが「エメラルドグリーンで美しい」エンゲージメントカード。「価値観に向き合うカード」と知って直感的に興味を惹かれ、購入。最初は身近な仲間と使ってみたところ、「これはただのゲームじゃない」と確信。対話が自然に深まり、思わず追加購入。
現在は複数セットを所有し、企業や教育機関、NPOの場で積極的に活用されています。
実際に使ってわかった、エンゲージメントカードの手応え
――使用して感じた変化と、購入前とのギャップ
「まさか、ここまで深く語れるとは思っていなかった」
カードに触れた人が最初に驚くのはその“問いの力”。一見シンプルな言葉で構成されたカードですが、参加者がそれぞれの意味づけをしながら語ることで、深い内省と他者理解が自然に生まれていきます。
特に印象的だったのは、「手放す」カードを選ぶ瞬間。エンゲージメントカードの認定ファシリテーター養成講座でもお伝えしている、『捨てる』ではなく『手放す』という言葉に変えるだけで、「対話の質が大きく変わる」と岡村さんは語ります。
過去の自分を否定するのではなく、これからの自分に必要なものを選び取る──そんな前向きな姿勢を引き出す力が、このカードにはあるのです。
――他社ツールと比べて感じた「エンゲージメントカード」の強み
これまでにも数々の対話ツールを使ってきた岡村さんですが、エンゲージメントカードは「記憶に残る体験の質が圧倒的に違う」と言います。
カードをきっかけに、自分の解釈を言葉にし、他者と照らし合わせていくプロセスは、ただの情報交換では終わりません。
沈黙も笑いも、迷いも戸惑いも、すべてが価値ある時間になっていく。
その余白を許容する設計が、他のカードにはない魅力だと感じているそうです。
ファシリテーターとしての一歩と、その実践効果
――認定ファシリテーターになった背景
日常的にカードを使っていくうちに、岡村さんの中に「もっと深く知りたい」という気持ちが芽生えていきました。
「このカードの背景にある理論や設計思想を知らずに人に勧めることはできない。」
そう思い、認定ファシリテーターの講座を受講。単に使い方を学ぶだけでなく、「なぜこの構造なのか」「なぜこの言葉が選ばれているのか」といった深い学びがあったことで、ファシリテーターとして更なる自信が生まれたといいます。
――講座を通じて身についたスキルと実践での活用
特に印象に残っているのは、カードに入る前に示されるさまざまなエビデンスや理論。心理的安全性の背景や、組織文化に与える影響を学ぶことで、「これは感覚のツールではなく、実証に裏打ちされた支援の道具なんだ」と実感したそうです。
研修の現場では、その一部を抜粋して紹介することで、参加者の納得感が高まり、ワークへの入り方が格段に良くなったと語ります。
現場で起きた変化と、印象深いエピソード
――カードを通じて生まれた「心に残る瞬間」
地方自治体の若手研修での出来事。参加者の一人が選んだ「愛」のカードを、どうしても手放せず涙を流しました。理由は、亡くなったお父さんとの記憶がその言葉に宿っていたから。このエンゲージメントカードを取捨選択する行為が、ただのワークではなく、自分自身を深く見つめる時間になった瞬間でした。
その研修ではチーム全体の雰囲気が一変し、「もっと深く知りたい」と自主的にカードを購入し、自部署で再度ワークを行った人もいたとのこと。
「言葉を通じて、人と人の距離が縮まる。あの場にいた全員がそれを実感した時間でした」と岡村さんは振り返ります。
今、選ぶ一枚と、届けたい人たちへ
――今の気持ちに響く「一枚」は?
今の岡村さんが選ぶのは「ポジティブさ」。新しい挑戦や苦手なことにも向き合う日々の中で、「前向きな視点を保つこと」が結果的に行動の質を高め、自分の力になると実感しているからです。
「情熱」も候補に挙がりましたが、「困難な状況や苦手なことでも前向きに取り組み、それが成功したら、きっと面白い世界になっている」と語ってくれました。
――このカードを届けたいと思う相手とは?
人材育成に携わる企業の方はもちろん、学校や地域、福祉・医療の現場など、「人と関わるあらゆる職種」に活用してほしいと岡村さんは話します。
特に、複数人で連携しながら成果を出すチームには、価値観の共有が対話と意思決定の基盤になるため、カードの活用は組織力の底上げにつながると考えています。
「共通の価値観が言語化されているチームほど、変化に強く、柔軟な対応ができる」。そうした組織の実現に向けて、エンゲージメントカードは有効な手段のひとつになると強調してくださいました。
「一人ひとりが未来や可能性に胸ときめかせ、ワクワクしながら働ける”ワクワーク”な社会を創る」ことを私たちはミッションに掲げ、働きがいの高まる場を増やしていきたいと考えています。