ピジョン株式会社は、社員一人ひとりが「自分らしさを大切にしながら働く」ことができる風土を醸成するために、自分自身の存在意義を考えてマイパーパスを作る活動をしています。
その取り組みの中で、最初の導入として「エンゲージメントカード」を活用いただいています。このツールを通じて、全社員が自分の価値観を再認識し、自分自身と向き合う時間を作り、チームや他部署の社員とコミュニケーションを活性化することで、より働きやすい組織文化を育んでいます。本インタビューでは、ピジョン様がエンゲージメントカードを導入した経緯や活用方法、そしてその効果について詳しく伺いました。
エンゲージメントカードとの出会いと導入の背景
ーーエンゲージメントカードを知ったきっかけは何だったのでしょうか?
私たちがエンゲージメントカードに出会った背景には、社内で実施されていた「Pigeon Frontier Awards(PFA)」という取り組みがありました。
PFAは、社員の力を最大限に発揮できるよう、失敗を恐れず未来に向けて挑戦することを応援・表彰する制度で、全社員から自由なアイデアや新しい事業構想を募集し、選ばれたものはプロジェクトとして活動できる制度なのですが、そこで私が”マイパーパス”を作る活動をしたいと提案をしたことが始まりですね。
「何をしたら自分が大切にしていることを明らかにしていけるだろう?」と考えた時に、ネットで調べたり個人の方の活動の情報を集めていく中で、エンゲージメントカードに出会いました。
価値観を知ることが自分を知る一歩として重要と考えていたので、それを楽しく、ゲーム感覚で導き出せるというのはすごく面白いなと思いました。
内省していく作業は自己と対話する苦しい作業になりがちで、重くとらえてしまったり、わざわざ時間を割いてまでやりたくないと感じる方もいるかもしれません。そこで、ゲーム感覚で楽しくできるツールを探した結果、エンゲージメントカードに辿り着きました。
ーー当社の「エンゲージメントカード」を選んでいただいた理由は何でしたか?
エンゲージメントカードはカード一つひとつに絵があり、価値観の単語も日本語と英語が書かれているため、使いやすさと視覚的なわかりやすさが魅力に感じられました。
自分たちでもいくつかのツールを試しましたが、イメージのしやすさ、カードを引いたときの理解のしやすさは、エンゲージメントカードが圧倒的に優れていたので、使わせていただくことにしました。
プロジェクトの始まり
ーーエンゲージメントカードを導入くださったプロジェクトでもある、「マイパーパスを作る」という提案はどのようにして生まれたのでしょうか?
当社には、会社として掲げる存在意義(パーパス)があり、私も含めて多くの社員が理解し、共感しています。ただ、それが日々の仕事や自分がやりたいと思っていることと直結しないケースや、自分事として落とし込むことの難しさを感じている社員もいました。
自分自身が大切にしていることがクリアになれば、仕事で迷ったり悩んだりしたときにも、道しるべになるのではないかと思いました。加えて、もし自分が大切にしていることと会社のパーパスで重なる部分が見つかれば、より自分らしく仕事ができる、のではないかと思いました。忙しい日々の中でも、少し立ち止まって自分について考えてみるきっかけを作りたかったのです。
異なるバックグラウンドを持った4人が集まり、自分が大切にしていることをクリアにするためにどうしたらいいのかを議論した結果、ゲームや対話を通じて楽しくパーパスを作るというワークショップをやろうというアイデアが生まれました。
1年半にわたる活動では、試行錯誤を繰り返しながらプロジェクトを進め、社内で最優秀賞を受賞することができました。
ーー「マイパーパスプロジェクト」では、具体的にどのようなことを実施されているのでしょうか?
まずは2022年から2023年にかけて、希望者を募りワークショップを実施しました。参加された方は自分のパーパスを言語化し、オリジナルのデザインでマイパーパスを作りました。それをデスクに貼ったり、見返したりしながら、立ち返る場として活用いただいています。
2024年は、より多くの社員に経験してほしいという社長の意向もあり、まずはエンゲージメントカードを全社員に実施することにしました。今年の6月から現在までに、合計350人以上の社員にワークショップを実施しています。
社員が選んだ価値観カードは、社内のタレントマネジメントシステム上で開示する予定で、普段仕事で関わっているメンバーがどのような価値観を持っているのかを可視化していきます。
また、エンゲージメントカードワークショップは、海外のグループ会社からも実施したいという声が上がっており、グローバルな広がりを見せています。
ーー取締役など幹部の方で実施いただいた所感はどうでしたか?
皆さん、とても楽しみながら参加していました。
カードの選び方や選んだカードの理由をフィードバックしてもらうことで、改めて、その人の人柄や考え方が見えてきました。知っているつもりでしたが、知らなかった一面も発見することができて、新たな気づきにもつながりました。
自然と本音を引き出すことができるカードですし、チームでやることで相手の考え方や傾向もわかるので、プロセス自体が面白いねと好評でした。
エンゲージメントカード活用による社員の反応とその効果
ーー全社員にエンゲージメントカードワークショップを実施した際はいかがでしたか?
実施後にアンケートを取っているのですが、満足度がとても高かったです。1から5段階で満足度をつけてもらったのですが、8割が4や5の高評価を付けていました。
「日々の業務に追われて、なかなか自分を振り返る時間をとることができませんでしたが、このワークショップを通して、仕事という感覚ではなく、楽しみながら向き合う時間が持てたのが良かったです」
「新しい発見があった」「横の繋がりができた」といった声や、他部門同士で実施しており「コミュニケーションの場として役立った」という声がありました。
全社員へのカード開示についても、ポジティブな意見が多く、約8割の方が自分自身の価値観カードの公開を希望しています。中には自分の価値観を外に出すことに抵抗を感じる方や、「自分をそれだけで判断されてしまうのは困る」という声もありましたが、公開を希望しない社員からも「自己理解を深めることができたので参加してよかった」という感想をいただき、自己理解のためのワークショップとして実施することの意義を改めて感じています。
ーー次のステップとしては、自分が選んだ価値観をもとにマイパーパスを作っていくのでしょうか?
そうですね。
エンゲージメントカードを実施した際に、マイパーパス作りを希望する方を募ったところ、多くの社員から「作りたい!」という声が寄せられました。そのため、10月から12月にかけて、希望者を対象にマイパーパスを作るワークショップを開催しています。
ーー他にワークショップを実施して見えてきたことなどありましたか?
社員が選ぶカードに傾向があることも興味深い点でした。
当社では、「家族」や「ウェルビーイング」「健康」という価値観を選ぶ方が多く、職種によって少し傾向が違っていることも面白い気づきでした。
「他の部署ではどんな傾向があるんだろうか」「他の人たちってどんな価値観を選んでるんだろうね」というような声も聞こえてきて、普段業務で関わりがない社員に興味を持つきっかけにもなったようです。
ーー導入前後で社内での変化は何かありましたか?
この活動の成果か定かではありませんが、プロジェクト前後でエンゲージメントスコアの「自分らしくいられる」という項目が伸びている結果となりました。
チーム内で選んだカードを共有し、お互いを知るきっかけに繋げている部門もあり、社内のエンゲージメント向上に貢献していると感じています。
今後、客観的に見えるかたちで成果が現れることを期待しています。
マイパーパスを作った社員は、自身のパーパスを意識しながら日々の業務に向き合っているようです。中には部屋に飾ったり、パソコンのデスクトップに貼ったりするなど、愛着を持って活用している方もいて、私たちとしても嬉しいですね。
今回、エンゲージメントカードワークショップに2回目の参加となる方もいましたが、前回の参加時と結果が変化している方もいました。
「前回と比べてこの部分は変わったけど、ここのカードは変わらなかった」
「この価値観は、自分にとって重要な軸だと再認識した」といったフィードバックがありました。
価値観は、その時々の状況によって変化することがありますが、エンゲージメントカードを通して、現在の価値観を再認識して、なぜその変化が起こったのかをご自身で考えてくれる方もいます。自分自身の今の状態を認識するために活用している姿を見ると、私たちの活動の意味を感じることができて素直に嬉しいなって思いますね。
ーー全体を通じて、良かった点や改善点があれば教えてください。
人によって思考が様々であって、内省に対して得意不得意の意識も異なりますので、ファシリテーターとしてその点を考えながら進めることは難しさを感じています。
御社のファシリテーター養成講座でノウハウをお伺いできて、非常に参考になりました。
エンゲージメントカードについては、「このような価値観カードがあればよかった」と意見をいただいたことはあります。例えば、デザイン系の仕事をしている社員から「“美”に関連する価値観が欲しかった」という要望もありました。一方で、エンゲージメントカードには非常に多くの価値観カードがありますので、迷ってしまって選びきれない!という意見もありましたね。
また、同じカードでも、捉え方が人によって大きく違うのは興味深いと感じました。
「最終的な目標」という理由で選ぶ人もいれば、「そこに行き着くための価値観」を選んでいる社員もおり、カードに書かれた言葉の解釈も様々です。毎回「誰ひとり同じ方はいない」という面白さを感じながらワークショップを運営しています。
ファシリテーター養成講座の活用と現場での実践
ーー弊社のファシリテーター養成講座を受講され、活用できている点はありますか?
自分自身のことを気兼ねなく話せる空気感を作るために、最初にアイスブレイクを入れて場が和んでからエンゲージメントカードゲームを開始するようにしています。
ファシリテーター養成講座でもアイスブレイクについて学ぶ機会があって、参考にしながら参加者がよりリラックスしてできるような場作りを意識しています。
また、お互いに価値観のフィードバック・共有する際に「こういうポイントで話すといいよ」といったアドバイスも養成講座で教えていただいた内容を活用しています。
自分の価値観を人に話すことに身構えてしまう方もいたので、少し笑いも取り入れたりして、ありのままの自分で、気負わずにワークショップに取り組める雰囲気づくりを心がけました。
ピジョン様の今後の展望と期待
ーー今後の展望を教えてください。
エンゲージメント向上にもつながる取り組みですので、たくさんの方に体験いただいて、その価値を感じてほしいですね。当社グループ会社はもちろんのこと、他社にもぜひ体験いただきたいです。手軽にできるカードを使ったワークショップですが、実際に体験することでその良さを感じていただけるはずです。多くの人が、自分らしく仕事と向き合えるきっかけとなるよう、今後も活動を続けていきます。
ワークショップを通して「10年後だったらまた気持ちが違うかもね」などの感想も聞かれました。今後も、継続的に活用できるツールとして、新たなバージョンや手法があればぜひご紹介いただきたいです。社内外で積極的に活用していきたいと考えています。
ーーまさに認定ファシリテーターの活動ですね。他にもエンゲージメントカードの活用方法はたくさんあるので、ぜひ共有させてください。
この度はありがとうございました!
「一人ひとりが未来や可能性に胸ときめかせ、ワクワクしながら働ける”ワクワーク”な社会を創る」ことを私たちはミッションに掲げ、働きがいの高まる場を増やしていきたいと考えています。