企業事例・インタビュー

思考の変化が行動を変える——琉球警備保障株式会社が研修に踏み切った理由と、2年間で生まれた変化

琉球警備保障株式会社 専務取締役 城間 氏

警備業は、地域の安全と人々の安心を最前線で支える、社会的責任の大きな仕事です。しかしその裏側では、慢性的な人材不足と在職者の高齢化という、業界全体が抱える深刻な課題があります。創業52年、沖縄県内で357名の従業員を擁する琉球警備保障株式会社は、その課題と真正面から向き合うため、2024年にトリプルバリューの企業研修を導入しました。管理部門を起点にしたエンゲージメント向上の取り組みが、組織にどのような変化をもたらしたのか。専務取締役・城間氏にお聞きしました。

  • 【課題】
  • ・人材の深刻な不足と在職者の高齢化による労働力低下
  • ・賃金改善が難しい構造的なジレンマ
  • ・管理部門のモチベーション低下と組織の一体感の欠如
  • ・部門間の連携不足と縦割り構造
  • 【結果】
  • ・営業と現場管理が事前協議して動く「チーム連携」が生まれた
  • ・読書習慣の定着により、従業員の思考力・発言力が向上
  • ・出退勤管理のDX化で給与トラブルが激減し業務効率が大幅改善
  • ・KPI・リーダーシップなど「共通言語」が組織に浸透しはじめた

沖縄の安全を52年守り続けてきた会社

── 改めて、御社の事業内容を教えていただけますか?

会社名のとおり、沖縄県内で警備業を専業にしております。今年で創業52年目を迎えます。業態としては施設警備、交通誘導、イベント警備(雑踏警備)、身辺警護、そして機械警備という4〜5つの業態で、官公庁や民間企業、各種団体に警備サービスを提供しています。今は官公庁からの売上比率が大きいのですが、今後は民間企業へのサービスを拡充して、付加価値をどう上げていくかが大きなテーマになっています。

── 従業員の規模感は?

警備員が357名います。そのうち340名ほどは各現場への直行直帰という働き方で、お客様の施設や工事現場、イベント会場へ直接向かってもらっています。本社で抱える管理部門・営業・総務は15〜20名ほどです。今回の研修を受けていただいたのは、この本社側のメンバーたちです。

賃金だけでは解決できない——業界が抱える構造的課題

── これまで集合研修はされていなかったのでしょうか?

個別の資格取得のための研修は実施してきましたが、会社単位での集合研修は今回が初めてです。2024年からトリプルバリューさんとスタートしました。

── どのような背景があったのでしょうか?

警備業自体が、もともと人気のない職種でして。業界全体の課題でもあるんですが、人材不足と在職者の高齢化が深刻で、若い人がなかなか入ってこない。労働力が低下していくことへの危機感がずっとありました。

賃金を上げれば解決するかというと、そう単純ではなくて。私たちの原資はお客様からの契約料金なので、すぐに引き上げることが難しい。長いスパンで見ていかないといけない課題なんですね。

そこで着目したのが、モチベーションとエンゲージメントです。賃金以外の満足度をどう上げるか。まず管理部門が自分たちのあり方を見つめ直して、そこから警備員をどう支援できるかを考える。その学びの場として、外部の企業研修を取り入れようと決めました。

「ワクワクする世の中を」——県外コンサルに託した理由

── 数あるなかで、トリプルバリューを選ばれた決め手は何でしたか?

実は、県外のコンサルタントにお願いしたいという思いがあったんです。県内よりも幅広い企業と向き合ってきた方のほうが、多様な考え方を持ち込んでくれて、うちのメンバーに刺激を与えてくれるんじゃないかと思って。そんなときに知人から山本講師を紹介していただきました。

ホームページを見たとき、「ワクワクする世の中を」というキーワードが目に飛び込んできて、面白いなと感じました。それと、別の企業での読書習慣導入の話を聞いたのも大きかったです。今まで本を読まなかった従業員が、自発的に本を読んで発言するようになった、という話で。テーマだけじゃなく、社員が自発的に取り組める仕掛けを持っている方なんだと感じて、ぜひお願いしたいと思いました。

まず、安心して話せる場所をつくることから始めた

── 2024年の1年目は、どのような内容からスタートされたのでしょうか?

報連相・PDCA・チームビルディング・心理的安全性といった基礎から始めました。チームとは何か、信頼関係や協働の意識をまず構築することが必要だと思っていましたので、そこを深掘りする内容を山本講師に設計していただきました。みんなが安心して働ける環境を整えて、チームで成果を出すという方向性を、まず全員で共有したかったんです。

研修には社長・役員も必ず全員参加するようにしました。社員だけに任せると気づきが止まってしまいますし、役員が現場のメンバー一人ひとりの考え方を直接聞く機会にもなりますから。また毎月1冊の課題図書を読んで感想を発表する読書習慣も導入しました。

── 参加されたメンバーの反応はいかがでしたか?

正直、最初は「面倒くさい」と思っていたと思います(笑)。私がいつも言い出しっぺで強引に引っ張るので、そんな感じで受け取られていたかと。ただ、回を重ねるごとに発言が増えてきて、「この人はこういう考え方をするんだ」という相互理解が生まれてきました。役員たちも、普段はなかなか見えない現場のメンバーの本音を知れて、新鮮な発見があったようです。

さびついた道具を使い続けていないか

── 2年目はどのようにレベルアップされましたか?

1年目が対話と安心感の土台づくりだったとすれば、2年目はロジカルシンキング・リーダーシップ・KPIと、より実践的な内容へ移行しました。大きかったのは、研修で学んだことと業務目標を連動させる設計にしたことです。研修で学んだ言葉や概念が、そのまま職場での目標に落とし込まれる。それによって「共通言語」が生まれてきました。

警備会社でもKPIやPDCAが普通に話せる会社にしたかった。難しくてもトライして、少しでもつかんでもらえれば、という思いでした。

── 印象に残っている研修の場面はありましたか?

山本講師がある研修で話してくれた「さびついた道具」のたとえが、私の中にずっと残っています。さびついた道具をずっと使い続けても仕事の効率は上がらない、道具を変えるだけで成果は劇的に変わる、という話で。自分自身も、さびついた考え方や方法を使い続けていないか、常に問いかけるようになりました。これが研修全体を通じる問いかけになっているように感じています。

バラバラだった組織が、チームとして動き始めた

── 具体的に、どのような変化が生まれましたか?

一番大きいのは、部門を超えたコミュニケーションが生まれたことです。以前は営業が受注して現場に流すだけという縦割りの構造だったのですが、今は人員の状況を事前に把握しながら、営業と管理が協議して動くようになってきました。バラバラだったのが、チームとして動き始めている感覚があります。

それから、読書感想文を通じて、メンバーが自分の思考を言語化する力が育ってきたことも大きな変化です。警備会社だからと自分を過小評価していたかもしれませんが、感想文を読んでいると、みんな本当にしっかりしたポテンシャルを持っている。研修はそれを引き出す場になっています。思考の変化が行動の変容につながるのが、一番すばらしいことだと感じています。

ドローン、農業、DX——10年先を見据えた挑戦

── 組織づくりと並行して、DX化も進められていると伺いました。

以前は350名超の警備員が電話で出退勤報告をしていたので、本社は毎朝まさに戦場でした(笑)。誰が誰かもわからなくなって、データが不正確なまま給与計算に使われ、毎月トラブルが起きていました。スマートフォンアプリへの移行で、それが劇的に改善しました。データの正確性が上がり、給与トラブルもほぼなくなった。デジタル化するだけでこんなに変わるのか、と実感しました。

高齢の警備員さんたちも、最初は心配でしたが、自分で使い方を調べて聞きに来てくれて。そういう前向きな姿勢を見て、こちらがちゃんと伴走すれば変わっていけるんだと気づかされました。

── 今後のビジョンを聞かせていただけますか?

3年後の目標は、技術型人材の育成と、組織として自律的に動けるチームをつくること。そして10年スパンでは、ドローンや画像解析などの技術を活用した次世代型の警備サービスを構築しながら、農業など警備以外の事業も展開していきたいと思っています。労働人口が減り続けるなか、人がやっていた仕事をデジタルに置き換え、少数精鋭で対応できるビジネスモデルへ転換していく。その利益で警備業の付加価値をさらに高めていくというイメージです。

「この会社にいてよかった」と言える場所にしたい

── 最後に、この研修を通じて描いている組織の姿を教えてください。

シンプルに言うと、働きがいがあって意欲が湧く、この会社にいてよかったと従業員みんなが思える組織にしたいんです。沖縄には歴史的な背景から年金が手薄な高齢者も多くて、生活のために働かざるを得ない方もたくさんいます。そういった方たちに安心して働ける場を提供することも、地域に根ざした会社としての社会的使命だと思っています。

研修を通じて、メンバーたちが自分の成長につながると感じてくれるようになってきた。考えるだけで止まっていたことが、少しずつ行動に変わってきている。失敗を恐れずにチャレンジできる環境を私が整えること、それがうまく噛み合えば、自分たちで考えて動ける組織になっていく。そこを目指して、まだまだやり続けていきます。

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